ちょっと街へ
今日久しぶりに街へ出た。
ぼくがちょうど、いりもしないチラシをわざと笑顔をつくった女の人にもらった時、
君が小学生の時、好きだった男の子とすれちがった。
もちろんぼくは、その子のことなんて知らないし、だからすれちがったことさえ
知らないわけでただ通り過ぎただけなのだけれど。
そのあと ちょうどカバンが欲しくて、小さな店に寄ったのだけれど、
その店員は君のお兄さんの近々結婚する予定の人のお父さんだった。
もちろんぼくもそのおじさんも、そんなこと知らなくて、ただそのおじさんが
娘が近々結婚すると言った時に、君が一度お兄さんの婚約者に
会ったといっていたのを思い出した。
幸せそうなそのおじさんが少しだけ淋しいとみずしらずのぼくに言うのを
なんだかとても素敵に思っていたよ。
毎日使えそうながっしりとしたカバンともう一つ君のために小さなカバンを
買ったのだけれど、もしかしたら君がこのおじさんと会った時に君がこれを
持っていたらおじさんはぼくを思い出すのかな。
もちろんぼくは知るわけがないので、こんなこと考えていなかったのだけれど。
そのあと少しだけ電車に乗って移動したのだけど、いつもよく見る車掌さんが
今回もいた。この人のことはいつもよく見ているから知っているのだけれど、
この人がぼくを覚えているかは知らない。
そして、ぼくの横に座った人がぼくはもう覚えていなかったけれど、
ぼくが昔バイトしていた店によく来ていた人だった。
その人がぼくを覚えていたかはしらない。
もちろんぼくはその人を覚えていなかったので考えもしなかったのだけれど。
少したってぼくは電車をおりた。
お腹がすいて、ぼくはたまたま見かけたレストランに入っていった。
その時最初に出迎えてくれた、ウェイターがぼくのお父さんの友達の息子さんだった。
もちろんぼくはそんなこと知らないし、案内された席に座った。
ただその時、ぼくが彼が胸につけていた名札に目を通したら、
その変わった名字のぼくのお父さんの友達のことを思い出したかもしれない。
だけどぼくはそうしなかったし、彼のことなんてまったく知らずに
予想外においしかったコーヒーを二杯とサンドイッチとタバコを三本
味わって、レストランを出た。
それから家に帰るためバスに乗った。
三つ先のバス停で偶然君が乗りこんできた。
もちろんぼくも君もお互いを知っているので、ぼくらは軽くおどろき、
ぼくのとなりの席に君は座った。
君は知らなかったから気付かなかったのだけれど、ぼくと今会うまでに、
今日君はぼくの知り合いと二人会った。
もちろん君は伝えようがないのでぼくもそんなことは知らない。
そうして、バスを降りて家までの少しの道をぼくらは歩いた。
道の途中で誰にも会わなかったから何事もなく ぼくらは家まで到り着く。
一年前から飼っている犬がぼくらの不在を責めるようにほえる。
だけど、それはこの坂を上がるもう少し先の話。
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